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*** “育てる経営”の戦略―ポスト成果主義への道 (講談社選書メチエ) ***

“育てる経営”の戦略―ポスト成果主義への道 (講談社選書メチエ)
高橋 伸夫
“育てる経営”の戦略―ポスト成果主義への道 (講談社選書メチエ)
人気ランキング: 33224位
おすすめ度:
発売日: 2005-04
定価: ¥ 1,575 / 販売価格: ¥ 1,575
発売元: 講談社
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

正論。
本書は「虚妄の成果主義」での分析を踏まえて、成果主義に代わる考え方を提示している。一見、探していたものは近くにありましたという「青い鳥」的発想、或いは「日本的経営に学ぶ」への回帰と誤解されるかもしれないが、そうではない。正・反・合、ジンテーゼ。ちゃんと読めば筆者は何も旧態依然の家父長的年功序列を賛美している訳ではないことは明白だ。
人事評価は難しい。社員の仕事のモチベーションを上げるのはもっと難しい。評価の目的は配分ではなく、育成とモチベーションにある。経営資源は大きく分けると資本と人。流動性が高まる資本に比べて人の希少価値が高まりつつある現在、人事・評価をどうするかが5年後10年後の企業価値を左右することになる。蓋し「資源・能力の蓄積過程こそが競争優位を決定づける」からである。

局所に閉じこもった提言
経済はグローバル化し、今後も勢いは増す。その中で企業は独自の価値を出し続けなければならない。

企業は、独自の価値を出し続けるために、価値を生み出すことのできる人材のみが欲しい。大金を払ってでも。

人材市場から価値を生み出せる人材を確保するためには、彼らが望む処遇をしなければならない。

社内でも価値を生み出せる人材とそうでない人材の処遇を変えないと、価値を生み出せる人材が流出する。

個人はこのような世界において、志を持ち、自らを磨き続けなければ高い処遇は望めない。何もせずに高い処遇を望むのならそれはパラサイトである。

中長期的に人材を成長させるのであれば、
仕事の目的を明確にし、様々な手法を考え、自分の得意な方法で成果をだし、
それに対するフィードバックで成否、その要因、対策を考えることを続ける必要がある。
単に仕事をやっているだけでは人は育たない。

また昇格や昇進は、適切な組織構造を確立・維持するために最適な人員配置の観点で行われるべきものであり、
モチベーションの道具として使っていいものではない。

これらのことを著者は理解しているのだろうか。
どうも「高度成長期の日本」という局所に閉じこもっているようだ。

思想として著者に賛同することは個人の選択だが、
鎖国をし、社会主義をベースとしない限り実現は不可能である。
賛成する人はそうしたいのかな。

「育てる経営」に最も適した人事制度の模索に対するひとつの解答
従業員を一元的な点数化により無理やり客観評価しようとする成果主義、および成果主義に基づく賃金制度を著者は強く否定し、「日本型年功制」と生活保証給的な賃金制度により「育てる経営」が可能になると説く。私が勤める企業も従来の職能資格的な人事制度から、より成果主義的な色彩の強い制度に移行して数年を経たが、組合によるアンケート結果を見ても新制度が従業員に心から受け入れられているとは言い難いのは正直なところ確かなようである。昨今の「格差社会」をめぐる議論などと同様、アメリカ主導のグローバリゼーションという大きな流れの中で、日本というひとつの地域社会が直面している文化的相克という文脈から読める問題かもしれない。私は著者に「若いサラリーマンに対する温かい視線」を感じるので、若い世代を指導・教育すべき年齢層のサラリーマンとして本書の内容には共感できる部分が多い。成果により給与差を設ける金銭的手法はモチベーションに効果がないのではなく、逆にネガティブなインパクトが強すぎるのだとする著者の意見は正しいと思う。ただし「給与(差)で報いるのではなく次の仕事で報いる」日本型年功制が望ましいのであれば、従業員の個性・能力・資質を如何に「次の仕事」に結び付けていくかという側面、即ち「組織における仕事・ポストの適切な配分とモチベーション」の問題にももっと言及して欲しかった。現在コンピテンシー評価を人事制度に組み入れている企業は多いと聞くが、有効に機能したという実例はあまり多くは聞かない。バブル期大量採用世代の一人である私は、著者が洞察しているように、大量採用によって生じた年齢構成のいびつさを解消するための便法として成果主義の誘惑に流された企業が多いことはなんとなく想像できるが、便法はあくまで便法であり真の解決手段ではないことを、労使共に再認識する必要があるのではないかとまで思ってしまうのである。

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